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音楽制作の手法のひとつ「サンプリング」。他の曲の一部をそのまま、もしくは加工して使い、新たにメロディなどを加えて別の曲にする、という手法で、もともとはヒップホップやR&B等のジャンルでよく使われてます。特に90年代や2000年代初頭あたりまではよく使われていて、ヒップホップを例にすると60〜70年代あたりのファンクやソウル、ジャズのレコードを使って、その曲の一部などを繰り返し再生して、それにラップを乗せる、といった感じで使われていました。

この曲はアメリカのヒップホップグループ「The Pharcyde(ファーサイド)」の95年発表の「Runnin’」という曲ですが、この曲に使われているギターとサックスの音はサックス奏者のStan Getz(スタンゲッツ)の「 Saudade Vem Correndo(1963年)」という曲からサンプリングされているのが有名ですね。

この曲がスタンゲッツの元ネタ。2分5秒のあたりでギターのフレーズ、2分47秒のあたりでサックスのフレーズがほんの一瞬だけ流れますが、このフレーズを繰り返し流してとても印象的な別の曲になってますね。

これが90年代以降になってくると、機材の技術の進歩もありサンプリングの手法も複雑になってきます。この辺りのサンプリングの名盤といえばアメリカのヒップホップDJ、DJ Shadowが有名です。彼のファーストアルバム「Endtroducing…..(1996年)」はアルバム全体をすべてサンプリングのみで作られたかなり実験的なアルバムで「世界で初めてのサンプリングのみで作られたアルバム」ということでギネスブックにも載っています。

この曲は「Endtroducing…..」に収録されている「Building Steam with a Grain of Salt」という曲ですが、曲のキモになっているピアノのフレーズはJeremy Storchの「I Feel a New Shadow(1970)」をサンプリングし、ドラムはFrankie Seay And The Soul Ridersの「Soul Food(1969)、曲の3分9秒あたりから流れるギターのフレーズはH.P. Riotの「I Need You(1973)」、その後に続くエレピの音はLexiaの「I Worship You(1972)」、さらに4分45秒あたりから流れるボーカルは同じ曲のこの部分をサンプリングしたりと、1曲の中に全然違う曲達を複雑に組み合わせて、まったく新しい感覚の曲に仕上げてる感じはスゴすぎますね。

この時期くらいからヒップホップ以外にもロックやポップスといったジャンルでもサンプリングを多用され始めます。

こちらはBeckがサンプリングをテーマにした名盤「ODELAY(1996)」からの1曲「Jack-Ass」ですが、この曲の全体のキモになってるふわふわしたシンセのようなギターのような音はThem / Van Morrisonの「It’s all over now,Baby Blue(1966)」をサンプリングして、また元ネタとはひと味違う曲になってますね。

2000年代で最も有名なサンプリングを使ったアーティストといえば、Daft Punkも外せないですね。最近のDaft Punkはサンプリングをあまり使わないような感じになっていますが、過去の曲ではほとんどの曲でサンプリングベースで曲を作っていました。

超有名な「Harder, Better, Faster, Stronger」ですが、実はこれもサンプリングをベースに、Daft Punkの代名詞ともいえるロボットボイスをかぶせた名曲です。

こちらが元ネタのEdwin Birdsongの「Cola Bottle Baby(1979)」。けっこうそのまま使ってます。

ご存知「One More Time」などはEddie Johnsの「More Spell on You(1979)」が元ネタですが、こちらは結構加工して一見どこをサンプルしたのかわからないような工夫もされてますね。

この時期のサンプリングアルバムとして個人的名盤はオーストラリアのDJ集団、The Avalanchesの「Since I Left You」。ハウス・ブレイクビーツをベースにヒップホップなどの要素も入れたとてもキャッチーなアルバムですが、このアルバムも先程のDJ Shadowと同じくサンプリングのみで作られたアルバムで、アルバム全体で使われたサンプリングは900曲は超えるという恐らく史上最も手の込んだサンプリングアルバムの名盤。

こちらはタイトルトラックの「Since I Left You」。曲自体もとてもキャッチャーで心地よい曲ですが、サンプルにはボーカル部分にThe Main Attractionの「Everyday(1968)」、イントロのギターにTony Mottolaの「Anema E Core(1962)」、コーラスやメインの箇所にThe Duprees「The Sky’s the Limit(1968)」、オルガンぽいとこはKlaus Wunderlich「Let’s Do the Latin Hustle(1976)」、ドラムパートはLamont Dozier「Take Off Your Make Up(1973)」と昔のポップスやジャズ、ボサノバ、ソウルなどかなり幅広いジャンルからサンプルを抜き出し、緻密に組み立て、まったく新しい曲に仕上がってます。

もちろん、邦楽、J-POPなどでもサンプリングを使った曲もありますね。古いとこだと、小沢健二の「ラブリー」などは有名ですね。

この曲の元ネタはアメリカのソウルシンガーBetty Wright(ベティライト)の「Clean Up Woman(1971)。

イントロ部分からけっこうそのまんま使ってます。

同じ系統でいくとCorneliusの96年のアルバム「69 /96」ではハードロックをテーマにサンプリングされた曲が多い名盤ですね。

この曲のギターリフはLed Zeppelin「Bring It On Home(1969)」、イントロのドラムはご存知、Queenの「We Will Rock You(1977)」などを使ったまさにロックなサンプル使いです。

最近の曲だと、西野カナのBelieve(2013)はOwl City & Carly Rae JepsenのGood Time(2012)が元ネタって感じですね。

サンプリングとはちょっと違うような気もしないでもないですが(笑)。

サンプリングの元ネタというと、海外の曲が使われることが多いですが、逆に日本の曲が海外のアーティストによって使われる曲もあります。

例えばこれ。

ドイツのヒップホップDJ、Marc HypeとピアニストのJim Dunloopのユニットの曲、「Predominant feat. Mr. Lif(2009)」という曲ですが、この元ネタは和田アキ子のセカンドシングル「どしゃぶりの雨の中で(1969)」を使ったちょっとビックリなチョイス。

こちらが元ネタです。いやー面白いですねー、ばっちりサンプリングしてます(笑)!ドイツのDJがこの曲を探してきたっていうのもなんだか面白いですよね。

さらにもう1曲。

この曲はアメリカの女性ラッパーGavlynの「What I Do(2012)」という曲ですが、この元ネタはなんと八代亜紀の「舟唄(1979)」からのサンプリング。ヒップホップに演歌っていうまさかの組み合わせにかなりの衝撃ですよね!イントロの部分をサンプリングして、そこにビートとラップを合わせてますね。それにしても、アメリカ人が演歌をサンプリングするっていうのも想像してみると面白すぎますよね。

なかなか奥が深い「サンプリング」の世界ですが、こういう元ネタと比較しながら音楽を楽しむというスタイルは、またちょっと違った音楽の楽しみ方のひとつではないでしょうか?そのアーティストの音楽的ルーツも分かったりと、調べてみるといろいろ面白いですよ。




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