Project Description
Story
思い出話に花が咲く
金曜日、23時30分。今から7時間後に急遽、旅行に行く事になった。
「うそでしょ?明日行くの?」
私はそう言ったが、ヒトミ曰く「だって、明日ヒマなんでしょ?だったら問題なし!」らしい。
そもそも、なぜこうなったかと言うと、私たち二人のプチ女子会『ひとり乙女会』の時だ。考案者のヒトミ曰く「独り身女子のための、おいしい鶏肉を食す会」らしい。『ひとり』と『とり肉』を掛けたのが彼女的に気に入っているようで今回で3回目となる。もしかしたら自身の名前にも掛けているのかもしれない。
そんな『ひとり乙女会』で高校時代の部活の話で盛り上がった。当時私たちはテニス部で、毎年夏になると軽井沢にある、学校が保有する施設に合宿に行った。もう10年近く前の話だから、私はすっかり忘れていたけど、話していたら色んな事を思い出した。昭和な匂いのする小さい合宿所。近くの神社でやった肝試し。庭で食べたBBQ。
「まだ合宿所ってあるのかな?」と私が言ったのが始まりだった。
「じゃあ、まだあるのか見に行こうよ。明日」
ヒトミは思いついたらすぐ行動する。そして、私はいつもそれに巻き込まれる。昔から、彼女といると退屈しない。
レンタカー1台借りて、昔の記憶だけを頼りに合宿所を探すというコンセプトのこの旅行、ヒトミ曰く「思い出探しの旅に出よ!乙女!」らしい。
軽井沢まではカーナビが連れて行ってくれるが、問題はそこからだ。当時は駅からバスに乗って行った記憶があるけど、住所はおろか、町名さえ知らない。地図を見て勘だけで走ってみたが、似たような風景ばかり。「まるで迷路だね」とヒトミは言ったが本当に迷路みたいだ。
何の成果も無く時間だけが過ぎていき、だいぶ遅めの昼食として入ったお蕎麦屋。そこのおばさんから大ヒントをもらった。話しかけられて、いきさつを話したら、その合宿所の場所を知っているらしい。だいたいの場所を教えてもらい、早速向かってみた。
20分走り、車が一台だけ通れるくらいの細い道に差し掛かった。周りは細くて高い木に囲まれて、緑の隙間から射す光が眩しい。しばらくして見覚えのある石階段が見えた。
「あれ、神社じゃない?」ヒトミも気づいた。肝試しをやった神社の階段。間違いない、この近くだ。この細い道も歩いた覚えがある。車をさらに進める。でも、お目当ての合宿所は見つからない。だんだんと風景も覚えのないものに変わっていった。
「もしかして、取り壊されちゃったとか?」と私が言うと、ヒトミは「通り過ぎちゃったのかも」と言い、引き返してみる。
今度はゆっくりと、周りを注意深く見ながら走ってみる。ぽつぽつと、どれも似たような建物がある。
「あった!あれ!」とヒトミは右前を指さす。車を停め、外に出てみる。だいぶ草に埋もれているような感じになっていたけど、確かに合宿所だ。
「まだあったんだあ」そう言うヒトミは嬉しそうだ。
見た感じ、閉鎖されてだいぶ経つようで建物の中には入れないけど、庭は外からも見えた。庭は荒れ果てていたけど、懐かしい光景が急に浮かんだ。質素なBBQ台を囲み、焼くのに失敗して煙がもくもくと浮かんでた、あの時の夕方。私たちは確かにあの時、ここにいた。
ヒトミ曰く「『思い出話に花が咲く』って言うけど、咲きすぎちゃってここまで来たウチらの花は、まだ枯れそうにない!」らしい。
ちなみに4回目の『ひとり乙女会』はその夜、初の二夜連続開催となった。
やっぱり、彼女といると退屈しない。
Author by anonymous
Spec
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- 製造国:日本
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