「午前1時の点と点」 | 思い出と想いで彩られたiPhoneケース/スマホカバー | MIRROR

田舎の、しかも真夜中にビーチに行ったって、勿論、人っ子一人いないのだけれど、そこで君は生まれて初めて、『誰もいないビーチ』を見たはずです。街灯も民家の灯りも無く、どこを向いても暗くて何も見えない世界。都会育ちの君なんかには、決して味わう事のなかった、光の無い世界が、君の目の前に広がっていたはずです。波の音だけは聞こえるけれども、目の前にある海は、昼間に見た眩しい程のグリーン色をした海ではなく、まるで自分が視覚を失ったかのような、見渡す限りに続く暗黒色をした海。この暗黒の海の先に、隣の国があって、人がいるとは到底信じられなくなって、本当に自分がこの世でひとりぼっちになってしまったような、寂しいような、怖いような、そんな感情になっていましたね。そして、段々と周りの暗さに目が慣れてきた頃、ふと、視線を真上に上げた時に見えた、唯一の光。その光は、数えるのが不可能なくらい無数に、夜空を覆い尽くすように敷き詰めてあるのを見て、君は言葉をしばらく失いましたね。それはまるで、夜空を針で無数に挿して、そこから太陽の灯りが、ぽろぽろとこぼれているような、そんな光景でしたね。
君の思いつきには、ほんとうにいつもまいっちゃうのだけれど、あの時だけは僕に良いことを教えてくれた気がします。それは、光が無いからこそ見える物がある、という事と、いつもそこに存在しているのに、光があるからそれが見えていない、という事。
こんな事を書くと、気障だなと思うだろうけれど、何年後かに、例えば、10年後とかにこの手紙を君に思い出してもらえたら、僕はまた、こんな出だしで君に手紙を書こうと思います。
『あの時の事、君はまだ覚えていますか？』

10年後の自分へ。」

Author by anonymous