「風、揺れる。」 | 手帳型iPhoneケース | MIRROR / Diary

彼氏に特に不満がある訳でもない。一緒にいて楽しいというよりかは落ち着く存在。
そんな中、たまたま始めたバイト先に彼がいた。顔は確かにかっこよかったけど、最初は特に何も思わなかった。話してみると趣味やセンスがあたしと合っていた。あたしの話をよく聞いてくれるし、相談にも真剣にのってくれる。それでいて、どこか少年のようなところもある。
彼氏に無いものを、彼はたくさん持っていた。

あたしと彼は自然と仲良くなった。バイト以外でも普通に二人で飲みにいったりするようになった。その度にあたしの話を聞いてくれたり、彼はおもしろい話やあたしの知らない知識や経験の話を聞かせてくれた。

あたしの気持ちは、いつしか揺らいでいた。
自分の想いと、罪悪感の間で。

あたしは長女だからか、周りからさっぱりした性格でお姉さん的なキャラクターと思われているけど、実際はそんなことない。本当は臆病だし、弱い人間。だからこそ、このつらい気持ちをなんとかしたいと思っているのに、助けてもらいたい相手は彼しかいない。
でも、誰にも相談できなかった。
ひとりになると、この事ばかり考えてしまう。最初から出会わなければ良かったのにとも思った。

結局彼に、あたしの気持ちを何も伝えなかった。

今でもこれで良かったと思っている。環境は何も変わらなかったけど、それでもあたしには、自分の事を妹のようにやさしく見守ってくれる大切な人ができた。
それは数年前の夏の事。とても眩しくて、さわやかな風が吹いていた日だった。

Author by anonymous