思い出と想いで彩られたiPhoneケース「MIRROR(ミラー)」。ひとつひとつのプロダクトに一人一人の思い出のエピソードがあるモバイルケースですが、「MIRROR」自体にも、生まれるまでのちょっとした物語があります。そんなショートストーリーを「鏡の裏側」と題して少しづつ紹介していきます。
もしも、iPhoneケースに物語があったら
前回では「MIRRORが生まれる5ヶ月前」ということで、一番最初のコンセプトは「好きな色を組み合わせられるモバイルケース」だったというお話。今回はその続きです。
「思い出で彩られたiPhoneケース」というキャッチコピーを突然思いついて、最初のコンセプトから路線変更するに至ります。この時点ではキャッチコピーが出ただけで、具体的なビジョンはまだ見えていない。そこで、「思い出で彩られた」ということを、どういった形で表現するか?まずはそこから決めなくてはなりません。
次に思いついたのは「短編小説集みたいなiPhoneケース」というフレーズ。このフレーズは「MIRROR」というプロダクトの最も「芯」の部分にあたるコンセプトとなる訳ですが、このコンセプトから派生して最初に考えついたのは「おとぎ話などをベースにその世界観をデザインに落とし込む」といったもの。
ただ、おとぎ話モチーフのプロダクトは意外と色んなモノに使われていたりするので、これだけじゃ、おもしろくない。そこでこのアイデアにもうちょっとスパイスを加えようと思った時のヒントになったのが、前回にも書いたアイデアで「お客さんも商品開発に携った」ような感覚になる仕掛けを入れる、ということ。このアイデアをベースにして考えた時に、お客さんの思い出のシーンを投稿してもらい、それをデザインに落とし込んだiPhoneケースという最終的なコンセプトにたどり着きました。
物語のあるiPhoneケース。しかも一つ一つの商品に一人一人のストーリーがある。その商品のデザインが増えれば増えるほど、色んな人のストーリーが増える。これを全体で見た時に「短編小説集みたいなiPhoneケース」というフレーズが初めて意味を持つ。
思い出のエピソードを送ってくれた方には「自分の思い出がデザインになる」というちょっと不思議な体験を。たまたま「MIRROR」のサイトを見てくれた方には「読み物コンテンツ」として、ちょっとした暇つぶしにも使える。そんな、商品を買わなくても、少しだけでも誰かが楽しめる要素があるプロダクトが出来れば、それだけでも作る価値はあるんじゃないだろうか。そう考えて「MIRROR」のコンセプトは決まりました。
「MIRROR」の企画書の1ページ目の写真。「短編小説のような商品を!」というコンセプト、一文のみがドドんと書かれています。
また同時にこのコンセプトはQUAELのブランドコンセプトである「すこしだけハッピーな気持ちになるものづくり」にも沿っていると考えました。QUAELの考える「モノを所有する喜び」のひとつの形として、「モノを媒介として、人とモノ、人と人が感情的に繋がる事」というものがあります。
これはどういう事かというと、例えば「自分と同い年のワイン」があったとします。それをたまたま見つけたら妙な親近感みたいなものを感じたりします。「今自分は○○歳だけど、このワインも今まで色んな事があったのかなあ」などと思うと、「ワイン」というモノなのに、どこか人っぽく感じたりして、なんだか愛着が湧いたりします。さらに、そのワインを買ったとして、いざ飲んでみようとなった時に一緒にいる人に「このワイン、自分と同い年なんだよねえ」とついつい色んな事を言いたくなってしまう。それを聞いた人が「へ〜、それはスゴいな」と思ってそのワインを飲めば、きっとお互いにとって「思い出のワイン」となるし、買った本人もそのワインを通じて人と想いを共有できる。買ってよかったなと、思えるんじゃないでしょうか。
それがQUAELの考える「モノを所有する喜び」のひとつの形であると思い、そんなプロダクトが出来るのであればチャレンジしたい、という事でこの「思い出で彩られたiPhoneケース MIRROR」というプロダクトを開発するに至りました。自分の思い出がiPhoneケースになれば、どこかで愛着を持ってもらえるかもしれない。他人の思い出であっても、どこか自分と重なる事があったり、共感したり面白いと思うかもしれない。そして、このiPhoneケースを持つことによって、ストーリーがある事によって、人とのコミュニケーションのネタになるかもしれない。そんな風に「MIRROR」を楽しんでもらえたら、嬉しいことです。(そこがかなり難しいですが。。)
と、コンセプトは決まり、次は思い出のエピソードを実際にデザインに起こす作業に入る訳ですが、このお話はまたの機会に。