Project Description
スマホケース商品概要
人の思い出のエピソードを基にデザインされたiPhoneケース「MIRROR」。実際にあった思い出のシーンや想いをネット上で募集し、ビジュアルに落とし込みました。一つ一つのストーリーにある、一つ一つのデザイン。「MIRROR」が伝えるものはデザインの裏側にある、人の想い。それは誰かの気持ちを映す、不思議な鏡のよう。
ストーリー・デザイン概要
主人公の「僕」がいつも通う飲み屋。そこの常連客で適当なことばかり話す男「Kさん」と「僕」との、お酒を飲みながら交わされるユーモラスな会話。二人の会話はなぜか「片思い」の話から「川を泳ぐ鯉」の話へと流れていく。友達でも仕事仲間でもない、ちょっと奇妙で心暖まる二人のコミュニケーションのストーリー。
Story
Kと鯉
「告白する時は女の子に鯉をプレゼントするんだよ」
そんな意味不明な事を言われたのは十数年前のこと。
居酒屋とバーの中間みたいな店の常連客の一人、通称「Kさん」が言った。「ケイ」が付く名前なのか、「K」がイニシャルなのか、それとも他の意味があるのか知らないが、とにかく皆が「ケイサン」と呼ぶので僕も真似て「Kさん」と呼んでいる。
ある時、彼が「彼女いないの?」と聞いた時があった。僕は当時片思いの子がいたのだけれど、なかなか告白できないというような返答をした。それを聞いたKさんは「恋の語源って魚の鯉からきてるって知ってる?」とニヤニヤしながら言う。
「知らないですよ。ていうか、そんな話、小学生だって信じないですよ、きっと」
「信じる信じないじゃなくて、そういう神話みたいなのがあるの」
「みたいなのって。そんなあやふやな神話、聞いた事ないですよ」
僕の抗議も気にせず、Kさんは話を進める。
「昔ね、たぶん平安時代とかそこら辺の話なんだけど」
「たぶん平安時代」僕は苦笑するが話は止まらない。
「ある貴族が片思いしてたんだよ。どうしたらこの想いを伝えられるのかって、毎日考えてたわけ。で、その想いが強かったからね、庭の池にいた鯉にその想いが乗り移っちゃうわけよ」
随分、感受性豊かな鯉がいるもんだと、僕は心の中でつっこんだ。
「でね、鯉の滝登りって言葉あるでしょ?その言葉通りに、その鯉は川上まで登って行ってそこにいる貴族の片思いしてる娘にその想いを伝えに行ったんだよ」
「鯉は池にいるって言ってませんでした?」
「じゃあ川だよ。細かいねえ、まったく。で、無事に川上にたどり着いた鯉は、貴族の想いをその娘に伝えるわけだよ。それを聞いた娘は自分も同じ想いだったので、とても喜んだと」
「それで、二人は結ばれたって話ですか?」
「そうそう。それが『恋』っていう言葉が生まれた語源だって説があるんだよ」
僕はもちろんそんな説を聞いた事はなかったが、Kさんには当時、まだ小さな娘さんがいて、よく娘さんに夕日と月がどうしたとか、王子様とお姫様がどうのとか適当なおとぎ話を作って聞かせていると言っていたのを思い出した。「これが娘にウケるんだよ」とニヤニヤしながら。
間違いなくこの鯉の話もKさんの「創作」だろうけど、僕は「で、鯉の話と僕の片思いの話はなんの関係があるんですか?」と一応、聞いてみた。
「それでな、その鯉の話以降、これが言い伝えられて告白する時は鯉をプレゼントする風習が出来たって話だよ」
「全然つながらないですよ、それ」
「だから、鯉を持って告白しに行きなさい、ってことでしょ」
「無茶苦茶だ」僕はさらに苦笑する。
「だいたい、告白するのに鯉を持って行ったら間違いなく引かれますよ」
「じゃあ、鯉のキーホルダーにするとかさ」
「いらないでしょ、普通」
「大事なのはこの鯉のストーリーを伝えるってことだよ。この神話と同じ想いであなたの事、想ってます!とメッセージを伝えるの」
「ぜったい伝わらないと思いますよ」
「いや、そんな事はないね。だいたい告白の時に鯉を持って行ったら相手はどう思う?」
「100パー、引きますって」
「甘いな」とKさんは、人差し指を左右に振りながら妙に古くさい仕草をする。
「告白はインパクトだよ。プレゼンも同じ。例えば告白が失敗したとする」
「そんな例えしないでくださいよ」
「例えばの話だよ。失敗したとしても、鯉を持って告白しにきたっていうインパクトは残るわな。そうなれば、彼女は今後何年経っても、どこかで鯉を見るたびにお前の事を思い出すでしょ」
「まあ、それだけ突飛な事をすればね」
「という事は、お前はいつまで経っても彼女の中では思い出の存在になれるって事でしょ。人はだんだんと色んな事を忘れていくけど、お前のことは忘れない。こんな素敵な事ってなかなかないよ」
「どうも納得いかないんだよなあ」
「とにかく告白してきなさい。鯉を持って」
そして僕はしばらく経ってから彼女に告白をし、「仮に」じゃなく「本当に」失敗した。もちろん鯉は持っていかなかったけど。
この話にはちょっとしたネタがあって、告白に失敗した直後、僕は半分やけになって彼女に鯉が好きかを聞いてみたら、小さい頃、おじいちゃんが鯉を飼っていて、それ以来、鯉には愛着があると言ったので僕はまたもや苦笑した。
その話を後日Kさんにしたら、彼はしばらくきょとんとしていたが(多分、言った事も忘れてたんだと思う)、「まあ、鯉は古くから出世の象徴だからなあ、そんな事忘れて仕事に集中しなさいって事でしょ。恋は仕事を一人前に出来るようになってから、だな」と相変わらずニヤニヤしながら言っていた。
その言葉を信じた訳ではなかったが、失恋を忘れるように僕はとにかく仕事に打ち込んだ。おかげで忙しくなり、あの店に顔を出す機会がめっきり減ってしまったけど、数ヶ月後、たまに行ってみてもKさんはいなかった。
実はそれ以来、Kさんとは会う事が無くなってしまったのだけれど、今でも彼の事を思い出す。本名も連絡先も知らない関係だったけど、なんだかあの適当な事ばっかり言う人との親交は妙に楽しかった。
そして僕は今、あの時のKさんと同じくらいの年になり、後輩と飲んでいる時、恋愛の話が出るとKさんの真似をして同じ事を言ったりする。
「告白する時に、鯉をプレゼントすると上手くいくって話、知ってる?」
Author by anonymous
Spec
- iPhone5/5c/5s/SE/6/6s/6plus/6s plus (iPhone 6plusのみ価格は¥3,480)
- Xperia Z5(SO-01H/SOV32/501SO)
- Xperia Z5 Compact(SO-02H)
- Xperia Z5 Premium(SO-03H)
- Xperia Z4(SO-03G)
- Xperia A4(SO-04G)
- Xperia Z3 Compact(SO-02G)
- Xperia Z3(SO-01G・SOL26・401SO)
- Xperia Z2(SO-03F)
- Xperia A2(SO-04F)
- Xperia A(SO-04E)
- Xperia Z1f(SO-02F)
- Xperia Z1(SO-01F/SOL23)
- 素材:ポリカーボネート
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